サステナビリティ
国産メープルシロップの生産販売
国産メープルシロップの生産販売
社内ベンチャーとして事業化した新事業探索チーム
発案「国産メープルシロップ」の生産販売
新事業の開発は、当社グループの新たな価値創出に向けた取り組みとして、中長期経営計画「SHIFT2030」においても重要テーマとして掲げられています。その使命を受け、2022年4月「新事業探索チーム」が発足。チームに与えられた課題の一つは、北海道に所有する森林資源を有効活用した新たな事業の創出です。そして今回、事業化へ向けて始動したプロジェクトが、メープルシロップの生産販売。事業アイデアの発案、初期仮説の検証、市場調査、試作品の作成等を経て、今年度、量産体制を整備し販売開始に至りました。チーム発足から約3年、テーマ着想から約1年半で成し得た事業化までの道程、そして今後の展望についてご紹介します。
開発ストーリー

北海道の社有林に、群生する楓を発見。
きっかけは飛行機で見た航路図。北海道とメープルシロップ産地は緯度が近いので、当社の所有林でも製造できるのではないかという着想を得ました。「新事業探索チーム」では、日頃から活発な議論と仮説検証を繰り返しており、「メープルシロップの生産販売」についても一つのテーマとして検証していくことになりました。当初は、当社が保有・管理する北海道の森林に楓が存在しないという報告を受けたため、あらためて楓を植林し20年後に事業を開始することや、帯広等の近隣地域の街路樹を利用する案も検討。しかし、天然林も含め、あらためて調査を行ったところ、膨大な楓が存在することが明らかになりました。

初めはバケツと小型濃縮器を用いた
完全手作業による試作。
日本では大規模なメープルシロップの生産が行われておらず、製造ノウハウや設備情報も乏しいため、本場の産地であるカナダをはじめ海外の文献や現地大学の資料、ネットメディア、小規模国内事業者からの情報収集を重ね、法規や資格も学びながら知識を蓄積しました。「カナダの産地と十勝地方はロケーションが似ており生産可能では」という仮説のもと、資源・技術・市場の調査を実施。さらにカナダ訪問も行い、2024年1月、カナダ製試作機を輸入し、その翌月からは試作を開始しました。社内においては、事業の構想段階から経営陣に随時プレゼンを行い、同年7月には市場調査を基にした事業計画が正式に承認されました。

国産ブランドへの期待、海外展開も視野に。
事業化へ向けたフェーズが進む過程で、必要となるリソースも増加。限られたメンバーで全ての業務をこなす中、設備導入作業も含めてスタッフが連携し、業務を遂行しました。2024年初夏には楓林の整備を開始し、カナダ製量産設備を導入。2025年2月には量産を開始し、4月に発売しました。販売開始早々1週間で完売する等、消費者や小売店からの評価も上々です。国内市場ではカナダ・アメリカ産がほぼ独占しており、国産シェアは0.1%未満ですが、「国産志向層」約10%に向けた約40億円規模の需要に対し、当社製品は優位性を持ちます。加えて日本ブランドを打ち出した、海外展開も視野に入れています。大規模生産による効率化・省力化で早期の黒字化を目指しています。
ニッタブランドを革新する新会社「わくっとニッタ」

メープルシロップ事業は、社内ベンチャーとして誕生した新会社「わくっとニッタ」が担います。社名は、グループ企業「北海道ニッタ」が行ってきた森林保護や地域貢献活動のプロジェクト名を引き継いだもので、親しみやすさと事業の方向性を踏まえて採用されました。従来の「ものづくり企業」やBtoB事業とは異なるブランド展開で、「新しい何か」を生み出し続け、グループ全体に良い刺激を与える存在を目指しています。
「わくっとニッタ」はメープルシロップ事業の早期黒字化を目指す一方で、他の新事業の開発にも取り組む方針です。この度のメープルシロップ事業は、海外で実証済みの技術を日本で事業化したものですが、これは創業時の革ベルトや、ホース・チューブ、タイミングベルト、半導体関連製品にも共通する、当社ならではの成功パターンです。
創業者から受け継ぐ自然環境への想い

メープルシロップ事業は、樹齢20年以上の楓類から成長に影響のない樹液全体の5%だけを採取し、100年以上同じ樹から毎年収益が得られます。寿命を迎えた楓は最終的には伐採し、高級家具材としても活用可能です。楓が成長する間はCO2削減効果が続き、環境負荷の少ない事業モデルとなっています。加えて、シロップ濃縮工程のエネルギーには、林業残渣を薪として利用する等、本事業は経済性と社会性を両立する、SDGsの考えにも沿った持続可能な事業です。
「山の恵みで利益を得ることで、山を守る」という、経済活動と社会活動をつなげる発想は、創業者の自然への想いを継承するものです。「わくっとニッタ」は、メープルシロップの北海道の特産品としての定着を目指しつつ、今後も社会性と経済性の両立を追求していきます。
- VOICE -
事業によって自然や地域、人々を豊かにする
そんな未来に向かって挑戦します!
これまで3年間、良い環境で自由な発想を試すことができ、とても楽しく、実に有意義な経験だったと感じています。ゼロから新事業を立ち上げることには恐怖もあり、困難を乗り越えるためには創意工夫の連続でしたが、それもまたワクワクする挑戦でした。これからも、北海道の自然資源を活用した事業を通じ、かかわる全ての人々が「わくっ」とする新事業の創出に挑戦します。事業拡大が自然を豊かにする仕組みをつくり、そこに暮らす人も豊かになる、そんな未来へ向けて邁進します!
