サステナビリティ
TCFD

TCFD提言に基づく情報開示

TCFD

当社グループにとって、気候変動は事業継続に影響を及ぼす重要課題の一つと認識し、2022年5月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)※提言に賛同しました。気候変動が当社グループの事業に与えるリスク・機会を分析して経営戦略・リスクマネジメントに反映するとともに、情報開示を充実させてまいります。 ※ TCFDとは:G20(金融・世界経済に関する首脳会合)の要請を受けた金融安定理事会(FSB)により設立されたタスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)。気候変動を「リスク」と「機会」として捉え、温室効果ガスによる気温上昇が企業財務に与える影響を開示することを提言。

ガバナンス

当社グループは、気候変動を含む環境問題への対応を経営上の重要な課題の一つとして位置付けています。サステナビリティに関する社会課題の解決に向けた取組みを一層推進するため、従来「CSR推進・リスク管理委員会」が所管していた業務の一部を移管する形で、2022年5月13日付で「サステナビリティ推進委員会」を設置いたしました。
当委員会は代表取締役社長 が委員長を務め、年4回開催し「NITTAグループ理念」、「NITTAグループ行動憲章」および「サステナブル経営方針」に基づき、中長期的かつESGの観点から、気候変動によるリスクと機会についての審議や気候変動リスクへの対応について審議しています。その結果は年4回取締役会へ報告することとしており、取締役会ではその内容を考慮した上で、重要な事項について審議し、決定しています。

サステナビリティ推進委員会
委員長
代表取締役社長
副委員長
代表取締役専務執行役員
委員
取締役、監査役、事業部長等
事務局
経営管理グループ、安全環境品質グループ
コーポレート・ガバナンス体制
コーポレート・ガバナンス体制
気候変動関連のガバナンス体制
組織名 役割 頻度
取締役会 気候変動関連の最重要事項の決定・報告 4回/年
サステナビリティ推進委員会 取締役会への気候変動関連事項の付議・報告 4回/年

戦略

当社グループは事業において気候変動が及ぼすリスクと機会について検討を行いました。リスクと機会については、政策や規制など社会的要求の変化等によって生じる“移行“リスク・機会と、異常気象の激甚化などによって生じる“物理”リスク・機会を特定しています。
シナリオ分析では、IEA(国際エネルギー機関)等が公表している「科学的根拠を有するシナリオ」を用いて、事業にどのような影響を及ぼすかを検討しました。今回実施したシナリオ分析は、当社ベルト・ゴム製品事業及びホース・チューブ製品事業における原材料・部品の調達、製品開発、製造、販売までのサプライチェーン全体を対象とし、「4℃シナリオ」、「1.5℃シナリオ」の2つのシナリオを用いて、2030年時点における影響を考察・検討しました。

4℃シナリオ
気候変動対策が現状から進展せず、地球平均気温が産業革命期以前と比較して今世紀末ごろに約4℃上昇するとされるシナリオ。異常気象の激昂化や海面上昇など。物理的なリスクが大きくなる一方、企業活動や消費活動に対する締め付けは現行より強化しないとされています。
1.5℃シナリオ
カーボンニュートラル実現を目指した取り組みが活発化し、地球平均気温が産業革命期以前と比較して、今世紀末ごろに約1.5℃の上昇に抑えられるとするシナリオ。物理的なリスクの高まりは抑制される一方で、税制や法規制という形で企業活動や消費活動に対する締め付けが強まるとされています。
項目 売総への影響 事業インパクト
4℃ 1.5℃ リスク 機会
移行 政策・規制 炭素価格(炭素税) 2

【1.5℃】
生産活動でCO₂を排出しているため、炭素税が導入されることでCO₂排出に伴うコストが増加する

排出権取引
GHG排出規制への対応
2

【1.5℃】
排出権取引制度の強化や対象地域の拡大により、GHG排出枠を超えた場合クレジット購入などの追加コストが発生する

プラスチック規制

【1.5℃】
プラスチックに関する規制の進行に伴い、代替材料の置き換えやリサイクルの高度化に対応するための費用が増加する

森林保護に関する政策

【1.5℃】
森林吸収・炭素除去系クレジットの活性化に伴い、植林活動が推進され、CO₂吸収機会の拡大、植林地域における雇用や産業を創出

再エネ政策 2

【1.5℃】
排出規制強化(炭素税等)に伴い再エネ需要が高まり、再エネ価格が上昇しエネルギーコストが増加する

【1.5℃】
森林吸収・炭素除去系クレジットの活性化に伴い、植林活動が推進され、CO₂吸収機会の拡大、植林地域における雇用や産業を創出

省エネ政策

【1.5℃】
省エネ政策の強化による、設備什器の高効率機への更新が迫られた場合の支出が増加する

技術 再エネ・省エネ技術の普及

【1.5℃】
省エネ政策の規制強化に伴い、省エネ製品の需要が拡大する。そのため、「ゼロシーム」をはじめとする省電力製品の売上が増加する

【1.5℃】
省エネ需要の拡大に伴い、消費電力量を軽減できる「伝動用ベルト」の売上が増加する

低炭素技術の進展

【1.5℃】
EVの進展に伴いエンジン部品(内燃機関)の需要が減少に伴い、自動車向け燃料チューブの売上が減少する

【1.5℃】
軽量かつ高強度を要する材料として期待されている「Namd」技術により、軽量化が課題となっているEVや電動航空機向けの売上が増加する

【1.5℃】
大規模データセンターの増加に伴い、サーバーの冷却需要が増加し、冷却配管用のニーズが高まり、樹脂チューブの需要が高まる

【1.5℃】
部品の軽量化やバッテリーの冷却需要があるEV・FCVの進展に伴い、冷却配管用樹脂チューブの売上が増加する

物理 急性 異常気象の激甚化
(台風、豪雨、 土砂、高潮等)

【4℃】
生産拠点やサプライチェーンへ甚大な影響を及ぼし、操業停止や物流機能の停止、対応コストが増加する

【4℃】
調達資材の納期遅延や調達(運搬)コストが増加する

慢性 平均気温の上昇

【4℃】
空調負荷が増加し、エネルギーコストが増加する

【4℃】
外出機会が減少し宅配サービスの需要が拡大する。そのため、荷物搬送に使用するベルト類の売上が増加する

【4℃】
定温・冷蔵・冷凍状態での輸送需要の拡大により「低温特性が高いベルト」の売上が増加する

【4℃】
自然災害の増加により、施設や道路などの破損頻度が増加する。そのため、建設機械の需要が増加し、「ホース製品」の売上が増加する

定量分析を行った項目は1~5段階で評価し、定性分析を行った項目は大・中・小の3段階で評価した。

評価基準(定量分析)
1 1000万円以下の損害
2 若干の(10%未満)の利益減少
3 10%超の利益減少
4 大幅な(30%超)利益減少
5 赤字化

これらの分析・評価および対応策の検討は、社外のコンサルティング会社と連携しながら、サステナビリティ推進委員会での議論を踏まえて実施したものです。
今後も外部環境の動向や変化を踏まえ、定期的にリスクと機会の分析・評価の見直しを行っていく方針です。

対応策

列挙したリスクに対するレジリエンスを強化するために以下のような取り組みを推進しています。

分類 リスク対応策の方針
大分類 中分類 小分類
移行 政策規制 炭素価格
(炭素税)
  • コージェネレーションシステム高効率運用
  • 再エネ由来電力への切り替え
  • インターナルカーボンプライシングの導入
再エネ政策
  • オンサイトPPA導入
省エネ政策
  • 照明のLED化
  • エネルギー効率の高い機器への変更
技術 低炭素技術の進展
  • EV向け自動車部品、環境負荷低減ベルトなどの「環境配慮型製品」の開発、販売促進
物理 急性 異常気象の激甚化
(台風、豪雨、
土砂、高潮等)
  • BCP対策
インターナルカーボンプライシング(ICP)制度の導入
2023年4月1日から当社および国内子会社において、自社の基準で二酸化炭素の排出量を仮想的に費用換算し、設備投資判断の参考とする「インターナルカーボンプライシング制度」を導入しました。 社内炭素価格を18,000円/1t-CO₂と設定し、同制度を投資判断の基準の一つとして活用していくことで、低炭素・脱炭素設備・省エネ投資など、二酸化炭素の排出量削減に貢献する投資を加速していきます。

リスク管理

当社グループでは、気候変動に関して生じる変化を重要なリスク要因として認識し「サステナビリティ推進委員会」(従来「CSR推進・リスク管理委員会」で所管していた業務を2022年5月に移管)にて、気候変動によるリスクの把握及びリスクの回避・低減・未然防止に取り組んでいます。
当委員会は原則年4回開催し、グループの事業が気候変動によって受ける影響を判断するために、シナリオの分析等を行い、気候変動リスク・機会を特定、分析、評価しています。特定したリスク・機会は取締役会へ年4回報告を行うこととしています。

指標と目標

当社グループは、生産段階における温室効果ガス(以下、「GHG」とします)排出量の削減に関する基本方針として、2030年度までに2013年度対比46%削減、2050年度までに「カーボンニュートラル実現」を目指すと定め、その実現に向けて取り組んでいます。GHG排出量削減のために、①エネルギー使用量自体を削減する省エネの徹底、②再生可能エネルギーの活用拡大、③GHGフリーエネルギーの購入の3つの視点での取り組みを進めてまいります。

GHG排出量(Scope1,2)の推移

※上記のグラフは、当社グループの主力事業であるベルト・ゴム製品事業とホース・チューブ製品事業の2事業を対象としています。
2022年度は毎年の省エネ活動に加え、一部の国内生産拠点において、非化石証書による再生可能エネルギーの導入やコージェネレーションシステムの高効率運用、自家使用太陽光発電システムの導入を実施しました。今後、2030年度の目標達成に向け、省エネ活動を継続し、海外を含む他の生産拠点においても再生可能エネルギーの導入等を推進し、GHG排出量削減に努めてまいります。