サステナビリティ
トップメッセージ
2025年度を振り返り、現状をどう捉えているのか?定量目標は、計画水準に達した。
同時に、次への課題も明確になった。
中長期経営計画「SHIFT2030」フェーズ2の初年度にあたる2025年度は、売上高や営業利益をはじめ、定量目標をおおむね達成できました。ただし、事業ごとに進捗のばらつきがあり、達成できていない項目もあります。円安による押し上げもあり、全体の数字を見てすべてが順調だと評価できるものではありません。
主力のベルト・ゴム製品事業は、引き続き堅調に推移しました。長く苦戦が続いていたホース・チューブ製品事業は、局面が変わりました。AIを起点に半導体関連の設備投資が世界中で拡大し、年度後半から関連製品の受注が目に見えて増えたのです。半導体業界向けは、当社が随分前から関わってきた領域です。市況が低調な時期にも、お客様の用途や課題に向き合い、製品と技術の開発を積み重ねてきました。そうした長年の取り組みが、国内外で広がる需要を捉え、よい形で現れ始めたと考えています。
一方で、低調な分野、足踏みしている分野もあります。成果は成果として評価し、同時に、個々の事業や製品が抱える課題を見極め、あいまいにしないことが、次の決断と行動につながります。たとえば、グループ会社のニッタ化工品では、低収益事業からの撤退や生産拠点の集約など、事業と製品の「選択と集中」を進めました。その結果、売上高や利益額は前年度を下回りましたが、利益を生み出す事業基盤は着実に強化されています。こうした改革を着実に進め、経営資源を収益性や成長性が見込める領域へ振り向けることが重要です。今は、次の成長のために何をすべきか、よりはっきりと見えてきた状況だと考えています。
フェーズ2、2027年度へ向け、何にどう取り組む?既存事業をさらに強く。
そこに新事業や製品を加え、よりグローバルに。
フェーズ2の目標、さらには2030年の目標の達成に必要なのは、売上を伸ばすと同時に、収益性を高めることです。フェーズ2の初年度までは、おおむね計画水準で進んできました。しかし、現在の状態をそのまま延長するだけで、2027年度、2030年度の目標へ到達できるとは考えていません。既存事業をさらに強くし、そこへ新製品や新事業を加えて成長市場へ展開する。そして、それらをこれまで以上にグローバルに進めていきます。
鍵になるのが、事業部門の枠を越えた連携です。ニッタでは、各事業がそれぞれに技術や市場を開拓してきました。なかでもベルト事業は、長年の海外展開を通じて各地域に多くの取引先を持ち、販売網とノウハウを築いています。これは、グループ全体で活かすべき重要な経営資産です。お客様や販売店などとの関係を他の事業にもつなぎ、幅広い技術や製品を提案することで、事業の間に横串を通していきます。
ある事業のお客様と接する中で得た小さな情報が、別の事業の技術や製品と結びつき、新しい提案につながることもあります。長年培ってきた関係や情報を個々の事業の中だけにとどめず、グループの力に変えていきます。
そうした動きの中心となるのが、2024年に設けたグローバル推進室です。各事業部門の活動を請け負って代わりに行う組織ではなく、それぞれが築いてきた販売網、市場情報、製造ノウハウを横につなぎ、互いの力を生かして動ける新しい仕組みをつくる組織です。複数の事業部門や海外拠点の間に入り、単独の部門では動かしにくかった案件を前へ進めることや、新しい市場やお客様を探し、従来の事業範囲を越えた可能性を見つけることが、グローバル推進室の大切な役割です。さらに、海外での実務や現地拠点との協働を通じて、グローバル人材を育てる役割も担います。
その一つの形が、インドで動き始めています。2012年に設立した現地法人を基盤に、2026年2月、新工場を竣工しました。ベルト・ゴム製品事業、ホース・チューブ製品事業、空調製品事業という三つの事業が一つの拠点に集まり、情報や販売チャネル、製造・物流機能を共有しようとしています。そして、現地で人と仕組みを育て、地域の力で自律的に事業を動かせる体制へ、一歩ずつ進めていきます。新工場の竣工は、完成ではなく、単独の事業では届きにくかった市場へグループとして展開する取り組みの始まりなのです。
そして最も重要なのが、成長戦略を具体化し、それに必要な投資を、確実に、できる限り前倒しで実行することです。設備投資は、計画してから実際に稼働するまでに時間を要します。判断が遅れれば、成果が表れる時期も遅くなります。技術や市場の変化を見据え、お客様の言葉の端々にある、まだ十分に形になっていないニーズを捉える。その上で、自社が培ってきた技術や関係を生かせる領域を見極め、必要な投資を実行へ移します。実行した後は結果を確認し、必要に応じて戦略を見直す。この積み重ねを、2030年度へ、さらにその先へつなげていきます。
投じた資本を成果に結びつける視点も欠かせません。フェーズ2から定量目標に加えた事業ROICを共通の指標とし、売上や利益だけでなく、どの事業や製品にどれだけの資本を投じ、どの程度の収益を生み出しているかを確認しています。低収益領域の縮小や撤退だけを目的にするのではなく、そこで生まれた経営資源を、将来の成長が見込める次の領域へ再配分することが目的です。資本効率を意識した経営を徹底し、安定的な配当を軸とした株主還元とあわせて、その考え方と進捗を、投資家の皆様へ明確にお伝えしていきます。
2030年へ、さらに先へ。どのようにして成長を続けるのか?信頼という資産と、それを担う人とで、困難な時代に次の成長を実現する。
ニッタの成長を支えてきたのは、社員がお客様の期待に誠実に応え続ける姿勢だと考えています。私も技術者として、国内外のお客様からの難しい要望に応えようと試行錯誤を重ねたことが何度もありました。国内で郵便物を運ぶベルトへの新たな要求に取り組んだときや、北米で物流設備向けの製品を一から見直したときなどです。もちろん私一人でできることには限りがありました。技術、製造、営業の担当者がそれぞれの役割を果たし、課題を一つずつ乗り越える。他社もクリアできなかった課題に、チームで諦めずに挑み、ついに課題を解決する製品を開発する。そうしてお客様の期待に応え、評価をいただいたことは、大きな喜びでした。しかも、そうして得られた信頼関係は、別の案件にもつながっていったのです。一つの成果が信頼につながり、その繰り返しが事業をつくるのだということを学びました。
信頼は、ニッタの141年にわたる事業を支えてきた、最も大切な資産の一つです。創業者が重んじた誠意を尽くす姿勢は、いまもニッタの仕事の根底にあります。何か問題が起きたときに、担当者だけに任せておくのではなく、周囲の社員が声をかけ、知恵を出し、助け合う。私自身も、そのような多くの社員に助けられてきました。そうした風土で育った人材が、各分野で確かな仕事をし、長く信頼される関係を築いている。だからこそ、これからも人を育てることに、力を注いでいきます。
社員には、まず足元の目標に取り組むと同時に、10年後、20年後に自分がどうありたいか、という目標も持ってもらうよう働きかけています。長期的な視点を持った上で、昨日まで知らなかったことを今日知る、できなかったことを一つできるようにする。そうした日々の積み重ねで成長してほしいと願っています。
成長の道筋は一つではありません。目指すところが同じでも、そこへ至る方法は人によって違ってよいと考えています。そのための機会を提供し、しっかりと見守る。社員が安心して挑戦を続け、それぞれの力を発揮できる。そうした社風を、これからも育てていきたいと考えています。
社会に貢献する製品を生み出すこと。そのために発明と改良を重ね、人と人との良い関係のなかで仕事を進めること。時代が変わっても、その先にこそ新しい製品や事業があり、成長があると確信しています。
ニッタグループの141年の歴史は、社会の変化に応じて常に新しい技術や事業に挑んできた歴史であり、その中心はいつも「人」であり「信頼」でした。これまで培ってきた技術、ネットワーク、人材、そして信頼を、次の成長へ確実につなげること。経営者として、責任を持って実行していきます。